まずアレルギー性鼻炎について理解しましょう
私たちの体は、鼻から吸い込んだものが有害だと判断するとくしゃみで排出し、鼻水で洗い流し、鼻づまりを起こして奥に入らないようにする防御反応が働きます。これらの防御反応が過剰におこって自分自身を苦しめるのがアレルギー性鼻炎(花粉症をふくむ)です。そのため、アレルギー性鼻炎は、手術や内服で完治できる病気ではありません。 治療についてもまず第一に予防、症状緩和のために内服薬や点鼻薬などの保存的治療が望ましいとされています。 また、"鼻水" "くしゃみ" "鼻づまり" といった症状はアレルギーの原因物質(アレルゲン)が鼻の中に侵入した時だけに起こるわけではありません。アレルゲンと無関係に鼻水や鼻づまりが続いたり、冷気などで誘発されることがあります。これらの症状は、「粘膜過敏症」、「血管運動性鼻炎」と呼ばれる粘膜および神経の変化によって引き起こされます。粘膜に慢性の炎症が生じ、粘膜が腫れたり、粘膜上皮が破壊されるために冷気や空気中の塵・埃などの物理的な刺激や、ストレス刺激などの体調の変化に過敏に反応するようになる状態です。 内服薬や点鼻薬などの保存的治療の効果が乏しいアレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎に対しては、手術が効果的です。長期間薬の内服を余儀なくされている方、車や建設現場車両の運転などに従事する方、また重症ではなくてもアスリートや受験生、妊娠をご希望されている方など社会的な適応がありますので是非ご相談ください。 当院の鼻手術によって鼻粘膜をアレルギー反応が起こりにくい粘膜に変える、あるいはアレルギーが起こっても鼻づまりや鼻水、くしゃみなどが起こりにくい粘膜に変えることができます。レーザー手術では7~8割の方がおおむね日常生活に支障がない程度に改善するとされています。持続期間はだいたい半年から3年ほどです。また、多量の鼻汁、強い鼻づまり、頻回のくしゃみなど高度なアレルギー性鼻炎に対しては、アレルギー症状の発症に関与する神経(後鼻神経)を切断する手術(後鼻神経切断術)も行っています。この手術はレーザー手術が効かなかった方を含めても9割以上の方に有効であり、ほとんどの方が3年間ほど効果が持続しています。 このようにアレルギー性鼻炎の手術療法には様々なものがありますが、どのような方にどのような手術が適しているかを判断することが必要となります。まずは診察や検査をしたうえで、ご本人に適した治療法を相談していきましょう。またアレルギー性鼻炎以外に、慢性副鼻腔炎や鼻中隔弯曲症などが合併していて当院の手術療法で改善の見込みが乏しい場合は、当院と医療連携している大学病院などにご紹介させていただきます。
下鼻甲介粘膜焼灼術
まず薬剤を塗布した綿棒で鼻腔を拡げたあと、痛み止めの薬をガーゼに染み込ませたものを鼻の中に数枚入れて15分程度の局所表面麻酔をおこないます。実際の手術時間は10分程度で終了します。細い棒状のカメラとレーザー照射装置を鼻の中に挿入して行います。 手術した粘膜は軽いやけどのような状態になり、2~3日は鼻汁が多くなり鼻づまりもひどく術後しばらくはかさぶたが付着します。特に最初の1週間はゼラチン状のかさぶたが付きますが2週目からはかさぶたが薄くなり鼻の通りは良くなってきて、4週目頃にはほぼ粘膜が再生します。術後の痛みは軽度で鎮痛剤を服用される方は2~3人に1人ほど、翌日以後も痛みが続く様なことはほぼありません。出血も軽度で2~3日鼻水に血が混じる程度であり、特に血を止める処置も必要ありません。ただし、まれに鼻腔の狭い方ですと術後癒着をおこしてしまうことがあるので、術後1ヶ月間は週に1度ほどのペースで鼻処置に通院していただくのが望ましいです。受付・診察が大変混み合っておりますので、お電話での予約および土曜日の手術はお受けしておりません。ご希望の方は直近1カ月ほどのご予定を確認したうえで診察時にご相談ください。
後鼻神経切断術+粘膜下下鼻甲介切除術
レーザー手術では効果が不十分と予想される重症のアレルギー性鼻炎や下鼻甲介腫脹などの構造上の問題がある方がこの手術療法の適応となります。 鼻の粘膜でおこったアレルギー反応は知覚神経を介して下鼻甲介から脳へ伝えられてくしゃみ発作を引き起こすとともに、脳から下鼻甲介へ分布する分泌神経を介して鼻水の分泌を引き起こします。手術では内視鏡を用いてこの鼻水を出す神経とくしゃみを起こす神経を切断することにより、鼻水とくしゃみに対する抑制効果が高くなります。あわせて粘膜下下鼻甲介切除術やレーザー手術を行うことで鼻づまりも改善します。
手術費用について
1.当院の手術治療は全て、保険診療で行っています。
それぞれ厚生労働省の定めたものとなっております。ただし保険会社からの診断書記入は1通につき¥5,500(消費税込)となります。
2.具体的な手術費用は下記のようになります。(一部抜粋)
手術の術式決定時に受付にて概算をお伝えいたします。
術式 | 点数 | 手術費用(3割負担の場合) |
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下甲介粘膜レーザー焼灼術(両側) | 2910点 | ¥8,730 |
後鼻神経切断術(経鼻腔的翼突管神経切除術)(片側) | 26530点 | ¥79,590 |
粘膜下下甲介骨切除術(片側) | 2960点 | ¥8,880 |
3.上記以外にかかる費用
上記に加え、再診料、薬剤等は別途かかります。
4.医療費控除について
1年間に同一世帯で支払った医療費が一定金額(所得が一定以下の方を除けば10万円)を超えた場合、確定申告を行えば還付金が受け取れます。とくに後鼻神経切断術を行った方は忘れずにお手続きください。詳しくは税務署にお問い合わせください。
5.高額療養費について
被保険者またはその被扶養者が、同一の月にそれぞれが同一の医療機関で診察を受け支払った負担金等の額が一定額を超えた場合に、その超えた額が支給されます。こちらも後鼻神経切断術を行った方は該当することがあります。国民健康保険の方はお住まいの地域の区役所で、社会保険の方は加入されている保険組合(勤務先)で認定書の申請を行います。所得により限度額が定められていますので、詳しくは加入されている健康保険の窓口にお問い合わせください。